アルミ製の川船を造ったという会員さんを訪問しました。長良川の堤防にほど近いS工業を営むM社長です。私たちが訪ねたときは外出中でしたが、携帯電話に連絡を入れると、すぐさま飛んで帰って来てくれました。工場には海釣り用ボートや修理中のボート、部品が置いてありました。
アルミの川船を、なぜ造る事にしたのか尋ねると、「趣味が高じてなんとやら」ということだった。社長の趣味は「釣り」だそうだが、10年ほど前に「鮎の友釣り専用川船」を注文したところが、手元に届くのが1年以上も先になるということで、そんなに時間がかかるのなら自分で造ってしまえということになったらしい。(現在、船大工は、この長良川水系の郡上に一人しかいないそうです)
S工業は、アルミ、ステン、アルミろう付け、特殊合金などの溶接、鈑金の仕事をしている会社です。溶接という仕事は、ビル、エレベーター、橋、造船、プラント、発電所などを造るにあったて、特に重要な作業です。大事故は勿論のこと、人命にも係わる仕事なので、その作業者には厳しい国家資格が必要であり、また、国家資格とは別に各発注元独自の企業試験や資格を受け、合格しなければ仕事ができないそうである。S工業は防衛省の戦車の特殊アルミ溶接や、国内自動車メーカーの四輪バギー車のアルミフレームやフェンダー溶接等を手掛けてきたという、信頼のできる技術の持ち主です。また、自冶体には防災用6人乗り救助ボート、20艇を納めた実績もあります。(バギー車は日本では娯楽用に使われていますが、アメリカ、オーストラリヤでは、牧場で使われたり、国境警備隊が使っています。)
さて、本題のアルミの川船ですが、全長8メートル、厚み3ミリのアルミ板を溶接加工したもので、重量は130キロ程あります。当初は、アルミ特有の金属音が出て魚が逃げてしまったり、雨が降ると溜まった雨水で船が沈み流されてしまう等、金属製の欠点が有りましたが、防振対策と船底を二重にして浮力を増させる等の改良を重ね、木製の船に引けを取らない船に仕上がりました。
他社社員の技術研修指導で「アルミ川舟」を教材に製作したところ、その記事が地元新聞に載り、それを見た「小瀬の鵜飼」関係者から引船に使用したいとの申し出があったそうです。もしかしたら、来年あたり引船として小瀬の河原ででその船を見ることが出来るかもしれませんね。
※比較※
耐久性 木製(さわら)20年ほど アルミ製(板厚3.0)半永久
重量 ほぼ同じ
値段 ほぼ同じ80万円から120万円
使い勝手 @防振対策はしてあるが、木製には、やや劣る
@木製は乾燥すると隙間ができ、閉じるまでは乗れない
参考 防災用ボート(アルミ板厚1.5~3.0) 値段35万円前後
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